Quontier
テクノロジーセクター

特化型AIエージェントからヒューマノイドまで――2026年NexTech Weekが映した企業AIの広がり

特化型AIエージェントからヒューマノイドまで――2026年NexTech Weekが映した企業AIの広がり

2026年4月の「NexTech Week 2026【春】」は、AI・人工知能EXPOが10周年、ヒューマノイドロボットEXPOが日本初開催の節目となった展示会である。来訪者の声を扱った出展レポート続き、本記事は会場全体の出展傾向を観察したクオンティアによるトレンドレポートである。

AUTHOR

坂井 僚介 / RYOSUKE SAKAI

坂井 僚介

RYOSUKE SAKAI

Tech Ignitionセクター長

大手コンサルティングファームで大規模システム開発・金融BPR・要件定義に従事した後、中堅コンサルティングファームにて官公庁基幹システムのリバースエンジニアリングおよび構想策定を担当。現在はTech Ignitionセクター長として、生成AI・セキュリティ領域を中心にセクター運営を担う。

NexTech Week 2026【春】の規模感――AI EXPO 10周年とヒューマノイドEXPO初開催

NexTech Week 2026【春】の最大の特徴は、AI・人工知能EXPOの10周年と、ヒューマノイドロボットEXPOの日本初開催が、同じ会場で同時に起こったことである。10年積み重ねてきたソフトウェアAI領域と、これから本格化するフィジカルAIの専門展示が、同じフロアで隣り合う光景があった。

特に注目したのが、AI・人工知能EXPO内の特設ゾーン構成である。「生成AI Hub」「AIエージェント World」「AIインフラ」「AI活用に向けたデータマネジメント」と4つに細分化されており、AI関連の出展領域が、出展傾向ごとにフロアを分けるほど厚みを持っていることを示していた。10年前は「AI」という大括りで括られていた領域が、いまや内部で複数の方向に分岐している。

10周年と初開催が同時に立ち上がった構図は、企業AIがソフトウェアからフィジカルへ、汎用から特化領域へと、二つの方向に広がっている現状を象徴している。以降では、出展傾向の5カテゴリを通じて、この広がりを具体的に読み解いていく。

AI EXPO ブース来場者レポートを見る

特化型AIエージェントから現場ロボットまで――2026年の出展傾向5カテゴリ

2026年のNexTech Weekで観察された出展傾向は、ソフトウェアの特化型AIエージェントから現場のロボットまで、5つのカテゴリに整理できる。

第一は、生成AIソリューションが特化型AIエージェントへとシフトしている動きである。2023〜2024年は社内版ChatGPT型の汎用導入が中心だったのに対し、2026年は業務領域を絞った特化型エージェントの出展が目立った。小売の買い物支援、製造業の製品計画表作成、図面検討・管理など、業務に踏み込んだソリューションが見られた。セキュリティ領域に特化したサービスの増加も観察された。

第二は、既存SaaSへのAIアドオンである。従来のSaaS企業が、自社が蓄積してきたデータをAIエージェント越しに提供する潮流が広がっている。蓄積されたデータという資産にAIを重ねていく動きが、複数の領域で観察された。

第三は、AI受託開発・研修である。出展数で見れば最も多いカテゴリで、既存の研修会社に加え、スタートアップも数多く出展していた。Copilot、Geminiなど各種ツールの研修、Eラーニングなど、教育・組織開発の領域に多くのプレイヤーが集まっていた。

第四は、建設・製造現場の点検・品質チェックAIである。多くの出展が見られたが、対話を重ねると興味深い回答が返ってきた。点検そのものは従来型AIの方がスピード・精度ともに優位で、マルチモーダル生成AIの性能向上にもかかわらず切り替えが難しいという。生成AIが活躍するのは、点検結果のレポート整理など後工程にある、との見解が複数寄せられた。

第五は、現場向けフィジカルAI・ロボットである。後ほど紹介するGalbotを中心に、ヒューマノイドや業務向けロボットの実機デモを展開する出展が複数並び、今後数年でさらに進化していくであろうことを実感させた。

ソフトウェアの特化型エージェントから、SaaSへのアドオン、教育・組織開発、現場特化型AI、そしてフィジカルAI・ロボットまで――2026年の出展傾向は、企業AIが汎用技術から特化領域へ、ソフトからフィジカルへと広がる姿を映し出していた。

注目した出展企業――SaaSへのAIアドオン/飲料提供ヒューマノイド/物流ロボット

前節で見た5カテゴリのうち、特に印象に残った出展を取り上げ、それぞれの内容と、そこから読み取れる広がりの方向性を見ていきたい。

Speedaは、既存SaaSへのAIアドオンの好例である。業界調査やエキスパートインタビューを長年提供してきた基盤に、IR資料・財務情報・エキスパート知見が紐づけられ、調査時間を圧縮できる仕組みが構築されていた。展示を見ながら、AI活用が単なる効率化ではなく、人間の認知労力を高次の問いへ振り向ける段階に入りつつあると感じた。利用者が「本来とくべき問いに集中できる」状態を作り出そうとしているように見受けられた。

フィジカルAI領域で特に印象に残ったのが、ヒューマノイドロボットEXPOに出展したGalbotである。Galbotは中国系のスタートアップで、エンボディドAI(身体性を備えた人工知能)分野のユニコーン企業である。会場では用途の異なる2つのデモを並べて展示しており、フィジカルAIが多様な現場応用に踏み出していることを示していた。

1つ目のHumanoid Drink Stationは、クオンティアの後ろのブースに設置されていた展示で、ユーザーが指定する飲み物をロボットが選んで提供するデモを行っていた。会場で実際に動くヒューマノイドを目の前で観察できる場面は、フィジカルAIの実装段階を直接体感できる出展として印象に残った。

2つ目のGALBOT STOREは、物流倉庫等で活躍する荷物運搬ロボットを展示していた。注目したのは、遠隔操作コントローラーが用意され、来場者が実際にロボットを操作できる体験デモを併設していたことである。観察するだけでなく、来場者自身の手で動かせるデモを介して、フィジカルAIの実装が現場応用の段階に入りつつあることが伝わってきた。

SpeedaのSaaSへのAIアドオン、Galbotの動くヒューマノイドと操作可能なフィジカルAI――3つの出展は、企業AIの広がりが、ソフトウェアからフィジカルへ、観るものから体験するものへと進んでいる動きを象徴している。

展示企業の供給テーマと、企業が求めるAI活用――マッチングとギャップ

ここまで会場の出展傾向を見てきたが、ブース来場者レポートで整理した来訪者の声と重ねると、業界の供給と企業の需要には、合致する部分と、明確なズレが見える。

合致しているのは、特化型AIエージェントや研修・教育コンテンツの供給と、企業側の「個別業務に適用したい」「組織のリテラシー差を埋めたい」というニーズである。市場側の供給は、企業の関心領域に確かに応える方向へ進化している。

一方で、展示企業の多くが「すぐ使える特化型AI」を訴求するのに対し、来場した企業側は「自社のどこに適用すべきか分からない」段階で立ち止まっていた。製品の充実よりも、自社業務のどこにAIを適用すべきかを見極める段階で立ち止まる企業が多い、というのが現場の実感である。

研修・教育コンテンツの出展が多く見られたのに対し、企業側は「組織として動けない」「使う文化がない」という構造的課題を抱えていた。これはスキルの問題ではなく、文化と体制の問題である。教育コンテンツの拡充だけでは埋まらない領域がある。

生成AIの訴求が広範であるのに対し、現場の用途によっては従来型AIの方が優位な領域も存在していた。建設・製造現場の点検や品質チェックでは、生成AIへの切り替えがむしろ非合理になる場面がある。用途に応じた技術の見極めが、次の論点として浮上している。

供給は確かに進化している。しかし、企業が抱えるのは「製品の不足」ではなく「自社における適用と運用の不在」である。このマッチングとギャップの構造こそ、2026年の企業AI活用が直面する現実の輪郭である。

クオンティアの見立て――「広がり」の先で、企業が次に動くべき4つの論点

広がりの先で、企業が次に動くべき論点は4つに整理できる。

最大の論点は、用途に応じて技術を見極めることである。建設・製造現場の点検・品質チェックで、出展企業の多くが生成AI活用を訴求していた一方、現場の実装担当者に尋ねると、点検そのものは従来型AIの方がスピード・精度で速く、マルチモーダル生成AIの性能向上にもかかわらず切り替えが進まない、との回答が返ってきた。生成AIで何でもできる、ではなく、用途に応じて適切な技術を選び抜く時代である。「広がり」が広がるほど、重要度を増す論点である。

第一の方向性は、業務粒度のさらなる深化である。汎用AI、業界別AI、業務別AIへと、適用領域は今後さらに細かく分解される。小売・製造・図面管理など、各業務に踏み込んだソリューションが続々登場するだろう。

第二の方向性は、セキュリティ整備の本格化である。技術進化に伴い、情報漏洩リスクや、アップデートにセキュリティが追いつかない構造的課題が浮上している。今後の必須投資領域となる。

第三の方向性は、フィジカルAI・ヒューマノイドの本格到来である。今回見られたDrink StationやGALBOT STOREの体験型デモは、すでに実装段階に入っていることを示唆する。今後数年で、現場が確実に書き換わる。

2026年は、企業AIが「広がり」を達成した年として記録されるだろう。だが本当の挑戦は、その広がりを自社の現場にどう着地させ、何を選び抜き、どこに資源を集中させるかにある。クオンティアは、この実装フェーズで企業と共に動く存在として、現場の手応えを次の取り組みに繋げていきたい。

AI EXPO ブース来場者レポートを見る

クオンティアと、変革を共に。

貴社の課題解決に向けたご相談、またはクオンティアへの参画にご興味のある方はこちら。