セクター長インタビュー #4 構想から実行まで、一気通貫でやり切る ― PSX 百田 啓太郎

株式会社クオンティアのPSX(Product & Supply Chain Transformation)セクター長・百田啓太郎は、理系大学・経営管理大学院を経てWebエンジニアとしてキャリアをスタートし、アクセンチュアへ転身。小売SCM領域のAI活用型システム導入を長年リードした。「コンサルというワードをなくしたい」——その原点を聞いた。
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百田 啓太郎
(ももだ けいたろう)
株式会社クオンティア PSX セクター長
機械工学系学部・経営管理大学院修了後、Webエンジニアとしてキャリアをスタート。アクセンチュアに転じ、小売SCM領域のAI活用型大規模システム導入をリード。要件定義から運用まで一貫して関わり、2025年クオンティアに参画、PSXセクター長に就任。専門領域はSCM変革・エンジニアリングチェーン/サプライチェーン変革・業務×IT変革。
inLinkedIn機械工学系学部・経営管理大学院修了後、Webエンジニアとしてキャリアをスタート。アクセンチュアに転じ、小売SCM領域のAI活用型大規模システム導入をリード。要件定義から運用まで一貫して関わり、2025年クオンティアに参画、PSXセクター長に就任。専門領域はSCM変革・エンジニアリングチェーン/サプライチェーン変革・業務×IT変革。
inLinkedIn「つないで、動かす」――理系大学・経営管理大学院出身エンジニアがコンサルタントになるまで
機械系からMBA、そして「大丈夫」と言えなかったエンジニア時代
百田のキャリアは、一本道ではない。理系大学で機械工学を専攻した後、「機械工学をそのまま極めるよりも、日本の技術を経営的な視点で活用する仕事がしたい」という思いで経営管理大学院へと進んだ。技術と経営の間に橋を架けたい——その意識は、この頃からすでに百田の中にあった。
大学院修了後は、大学院の先輩の紹介でウェブ系スタートアップにエンジニアとして入社。複数の案件を並行して抱えながら仕事を覚えていった。しかし忙しさの中で積み重なっていったのが、「大丈夫です」という言葉だった。進捗が厳しくなっても、リスクが見え始めても、その一言で押し切ろうとし続けた。やがてそれは、ある案件の納品直前に大きな問題となって表面化した。無理が重なって体を壊したこともある。上司や先輩たちが奔走してどうにか収拾したが、後に先輩から言われた一言が、百田の胸に深く刻まれた。
「大丈夫って言っていたけど、全然大丈夫じゃなかったよね」
自分だけで問題を抱え込み、チームから状況を見えなくしてしまっていた——その失敗が、百田の仕事観の原点となった。タスクと優先度を可視化すること、リスクはチームで早めに共有すること、そして「個人で抱え込まず、チームで結果を出す」という姿勢。この原点は、以後のすべてのキャリアを通じて百田の軸であり続けることになる。
「SIerではない、コンサルタントだ」――アクセンチュアで視点が引きずり上げられた
現状を変えたいという思いで転職を考え始めた百田に、知人からアクセンチュアへのリファラルが舞い込んだ。テクノロジー部門への配属からのスタートとなり、事業の上流から関わりたいという気持ちとのギャップに、当初は正直な悔しさもあった。
しかし現場に入ると、そのギャップはすぐに別の学びへと変わっていった。百田が担ったのは、流通・小売業のシステム導入案件だった。要件定義から設計・開発・運用まで、プロジェクトの全工程に関わりながら、百田は徐々に「技術者」から「コンサルタント」へと視点を引き上げられていく。その転換を促したのは、当時の上司が折に触れて口にし続けた言葉だった。
「他のベンダーが言ってきたことを、そのまま鵜呑みにするな。お客さんにとって本当に最適なものはこうですよと提言できる——そういうコンサルタントであれ」
それまでの百田には、技術的に何が実現できるかというエンジニアとしての視点はあった。しかし、お客さんのビジネス全体を捉え直し、真に必要なことを問い返す視点は、まだ育っていなかった。他のベンダーや社内の意見を一度フラットに疑い、お客さんの立場で最善を考え抜く——その姿勢を、百田は繰り返しの実践の中で身につけていった。
チームで喧々諤々と議論しながら、より良いアウトプットを追い求める文化も、百田には新鮮だった。スタートアップ時代に身をもって学んだ「個人で抱え込まない」という教訓が、「チームで戦う」という確信へと深化していった。
6年間、チームをつなぎ続けた先で出会った「志」
アクセンチュアでの7年強のうち、約6年を費やしたプロジェクトがある。大手流通チェーンのAI活用型店舗発注システムの導入——店舗ごとの需要予測を高度化し、SCM全体を変革しようという大規模な取り組みだ。運用保守からエンハンス開発、そしてAIを活用したSCM高度化へと段階的に進化し、POCを2度経て全国展開へと漕ぎ着けた。
このプロジェクトで百田が担ったのは、特定の専門領域を深掘りすることではなかった。AIロジックを担うチーム、インターフェースを開発するチーム、バッチ処理・インフラ・移行・運用まで、複数のチームのあいだに立ち、互いを理解させ、全体を一つの方向へ動かしていく役割だ。個々のチームは技術的には優秀でも、互いの言語が通じなければシステムは機能しない。百田はその「翻訳者」であり「調整者」だった。後に百田はその役割をこう表現している。
「各チームをつなぐ人は、絶対に必要なんです。AIロジックもわかって、インターフェースもわかって、バッチもわかって、インフラもわかって——シナプスみたいな感じです」
「そこをつなげられるのは、長年そのプロジェクトに携わってきた人間でなければできない」
全体像を知り、各チームの事情を理解し、問題の本質を見抜いて橋渡しをする——その役割は、短期的なアサインでは絶対に担えない。長年の積み重ねがあって初めて機能する。後に業界の先行事例として外部にも公開されたこのプロジェクトの成功が、百田にその確信を与えた。
6年という年月は、百田に「つなぐ」という仕事の本質を骨身に染み込ませた。
やがて百田の中に、次のステージへの問いが芽生えた。大きな組織の中で「つなぐ」ことには長けた。では次は、ゼロから組織をつくり、自ら価値を定義する側に立つことができるのか——。そんなタイミングで出会ったのが、クオンティア代表・吉沢との対話だった。「今までのコンサルとは違う戦い方で日本を変えていきたい」という言葉に、百田は純粋な志を感じた。「今このタイミングでやらなければ、一生やらない」——そう確信した百田は、深く考え込む間もなく参画を決断した。
PSXが解く経営課題――相反する意思を、一つの動く形にする

「SCM変革」という言葉を聞くと、需要予測の精度改善や在庫の最適化といった、技術的な改善をイメージする人が多い。しかし百田が長年向き合ってきた経営課題の本質は、もっと根深い場所にある。
大手流通チェーンのプロジェクトでも、その構造は鮮明だった。本部は変革を強く求める。しかし現場には、慣れ親しんだオペレーションを守りたいという抵抗がある。IT部門はシステム全体の整合性を優先したい。事業部門はとにかく使いやすさを求める。さらに、製品の企画・開発から生産・調達・物流・販売に至るエンジニアリングチェーンと、需給を管理するサプライチェーンは、それぞれ別々の論理で動いている。
相反する意思が、あちこちに存在している。
この構造は、流通に限った話ではない。製造業でも、小売業でも、SCM変革に取り組む企業が直面するのは、「正しい戦略」を描くことの難しさではなく、「異なる論理を持つ組織を、一つの方向へ動かす」ことの難しさだ。戦略を描く力だけでは、変革は現場まで届かない。
この構造は業種を問わない。製造・流通・小売、どの領域でも、SCM変革に取り組む企業が突き当たるのは「戦略が正しいかどうか」ではなく「誰が動いて誰が動かないか」という問いだ。技術的な最適解が出ていても、組織が動かなければ変革は机上の空論に終わる。
正解は一つではない。利害の異なるステークホルダーの意図を丁寧に紐解き、全体として機能する形に束ねていく。それは、技術的なソリューションを提示するだけでは決して実現できない仕事だ。アクセンチュアで叩き込まれた「お客さんにとって本当に最適なものを問い続ける」という姿勢が、ここでこそ試される。
そしてPSXが関わる課題の射程は、サプライチェーンだけにとどまらない。製品の企画・開発から始まるエンジニアリングチェーン、それを受ける生産・調達・物流・販売のサプライチェーン——この二つを分断せず一続きのバリューチェーンとして捉え直すことが、PSXのアプローチの起点だ。だからこそPSXに持ち込まれる経営課題は、一言で言えば「相反する意思を、一つの動く形にしてほしい」というものになる。構想を描くだけでなく、現場で実際に機能するところまでやり切る——それがPSXの仕事の定義だ。
その実現に必要なのは、華やかな戦略フレームワークではない。本部と現場の両方の言葉を話せること、IT部門と事業部門の双方の論理を理解できること、そして「動く形」になるまでその場を離れないこと。百田がアクセンチュアで6年間、チームとチームの間に立ち続けて磨き上げてきた能力こそが、PSXの強みの核心だ。
PSXが解く経営課題は、相反する意思を、一つの動く形にすることである。 エンジニアリングチェーンとサプライチェーンを分断せず一続きのバリューチェーンとして捉え直し、構想から実行まで現場で機能するところまでやり切る——それがPSXの役割だ。
クオンティアのアプローチ――「つなぐ」から「動かす」へ

百田がアクセンチュアで磨いてきた「つなぐ」力は、クオンティアというフィールドで新たな問いに直面する。「課題を解くこと」がゴールなのではなく、「課題を解いた先に何を創るか」——そこにこそPSXの仕事の醍醐味がある。
課題を解いた先で、一緒に何を創るか
コンサルタントが「課題を解いて終わり」になりがちなのは、百田もよく知っている。診断し、提言し、報告書を出せば仕事は完了——そういう関わり方が業界の標準だった。しかし百田が問い続けているのは、その先だ。課題を解いた後に、クライアントと一緒に何を創れるか。
その思いが具体的な形になっているのが、百田が力を入れる物流業界への取り組みだ。AI技術を持つスタートアップと、長年現場で業務を支えてきたSIer——この新旧のプレイヤーは、互いに持っていないものを持っている。AIスタートアップには最新技術の実装力があるが、現場の業務知識が薄い。SIerは現場を知っているが、先端技術への対応が遅れがちだ。その両者の間に立ち、互いの強みをつないで、業界全体がWin-Winで発展できる形へと実装するまでを推進する——それはまさに、百田が長年磨いてきた「シナプスとしての役割」の、次のステージにある仕事だ。
この取り組みで百田が大切にしているのは、「答えを持ち込む」ことよりも「一緒に試す」姿勢だ。PSXが関わる変革の現場では、最初から完璧な解が見えていることは少ない。本部と現場の意思がすれ違い、技術と業務の間に溝がある状態から始まることがほとんどだ。だからこそ重要なのは、迷いながらでも前に進み続けることだと百田は言う。
「失敗は、仮説が外れただけです。挑戦を止めなければいい」
その言葉は、スタートアップ時代に体を壊しながら学んだ「大丈夫と言い続けることの限界」と、表裏一体だ。抱え込まず、早めに共有し、チームで修正する——あの頃の失敗が、今の「挑戦を止めない」という姿勢の土台になっている。
完璧な計画を持ち込もうとすれば、動き出しが遅くなる。仮説を持って動き、外れたら修正する——その繰り返しの中にしか、現場で機能する答えは生まれない。百田自身が6年間のプロジェクトで体感した「試行と修正の積み重ね」が、そのままPSXの仕事観になっている。
PSXのチームにも、その姿勢は色濃く反映されている。コンサルティングファーム出身者、事業会社出身者、SIer出身者——バックグラウンドは多様だ。それは意図的でもある。同じ出身母体で固めれば思考が均質化し、「現場で本当に動くか」という問いへの感度が鈍くなる。異なる経験を持つ人間が本音でぶつかり合うから、鋭い答えにたどり着ける。「種類を揃える必要はない」——百田が繰り返すその言葉には、多様性を「コスト」ではなく「強み」として捉える確信がある。
「全員が表に出て戦う」組織へ――セクター長として向き合ったリアル
PSXのセクター長になったのは、「やりたかったから」というより「やらなければならない」という感覚からだった、と百田は言う。
クオンティアに入って実感したのは、メンバー一人一人の力が高いということだった。経験も、思考力も、技術力も、それぞれが十分な水準にある。しかしそれが「チームの力」になりきれていない。個人として優秀であることと、組織として機能することは別の話だ。
「一人一人の力は高いと思います。ただ、チームとしてのまとまりにはまだ課題があって。このままでは崩壊の危機もある——そう感じたから、やるしかないと思いました」
大手コンサルティングファームには、陰で支える層がある。表に出るパートナーやマネージャーの背後には、調査・分析・資料を担う人間が何重にも重なっている。しかしクオンティアにその層はない。全員が、自ら考え、自ら動き、自らクライアントの前に立つ。それを百田は「全員が表に出て戦う」と表現する。
一見すると厳しい環境のように映るかもしれない。しかし百田はそこに、成長の本質があると信じている。サポートに徹している限り、クライアントの反応も、現場の空気も、交渉のリアルも、自分のものにならない。自ら表に出て、失敗も含めて引き受けてこそ、「実行できるコンサルタント」としての力がついていく。
自ら表に出て戦う経験の積み重ねが、コンサルタントとしての力を本当の意味で高める——百田がそう確信するのは、自身の原体験があるからだ。スタートアップ時代に「個人で抱え込まない」と学び、アクセンチュアで「チームで戦う」と確信し、今またセクター長として「組織として戦える状態」をつくろうとしている。その一本の線が、百田のキャリアを貫いている。
しかし「全員が戦う」は、「全員が同じように戦う」ではない。
「個人事業主の集まりではない。同じゴールに向かって協力し合える組織でありたい」
この言葉の背景にあるのも、百田自身のキャリアだ。スタートアップ時代の挫折で「チームで動く」ことの意味を学び、アクセンチュアでその確信を深め、今クオンティアでそれを組織として体現しようとしている。PSXが「つなぐ」から「動かす」へと進化するためには、その土台となる組織そのものをつくることが、百田にとっての最初の仕事だ。
戦い方は一人一人違っていい。強みのスタイルも、得意な領域も、それぞれ異なる。しかしゴールを共有し、互いに補い合いながら前に進む——それがPSXという組織の姿だと百田は描く。
AI時代に、PSXの価値はどこに残るか

「コンサルというワードをなくしたい」——百田は静かに、しかし明確にそう言い切る。挑発的に聞こえるかもしれないが、意図はむしろ逆だ。これまでのコンサルティングの関わり方——提言して終わり、という仕事のあり方から脱しなければ、これからの時代に価値を出し続けることはできない——その危機感から来ている。
AIの進化が加速する中、コンサルティング業界は変曲点に差し掛かっている。データ分析、業界調査、仮説立案、報告書の作成——これらはAIが急速に得意とする領域になりつつある。「AIエージェントができる仕事はそちらに任せる。自分たちは人間にしかできないことをやる」——百田はそう言い切る。そこに抵抗はない。むしろ積極的に活用すべきだ。問題は、その先にある。
「コンサルの定義自体が、変わってくる」
SCMコンサルという領域でも、その変化は顕著だ。SCM変革に取り組む企業が求めるのは、もはや分析レポートではなく、現場で変革を動かし切れるパートナーだ。では、変わらないものは何か。百田の答えは明確だ。「実行部分を担える人間は、いつの時代も必要です」。
AIがどれだけ精緻な需要予測モデルを組もうとも、本部と現場の意思をつなぐことはできない。どれだけ最適化アルゴリズムが高度になっても、利害の異なるステークホルダーを動かすことはできない。「相反する意思を一つの動く形にする」という仕事は、徹頭徹尾、人間の仕事だ。システムを「設計」することと、現場で「機能させる」こととの間には、AIでは埋めることのできない空白がある。
より根本的に言えば、変革には「意思決定」と「合意形成」が伴う。どの機能を捨て、どの業務を変え、誰の反発を受け入れるか——これらは数値最適化の問題ではなく、組織の意思の問題だ。AIは選択肢の提示と分析は得意でも、その選択をする主体にはなれない。そしてその選択を実際に動かすのが、PSXの仕事だ。
もう一つ重要なのは、「現場の文脈を読む」という能力だ。同じSCM改革でも、現場の空気、リーダーの個性、組織の歴史によって、何が機能し何が機能しないかは大きく変わる。マニュアル化できない判断が、変革の成否を分ける。データからは見えない「人の動き方」を読む力——そこに、これからのコンサルタントの価値があると百田は確信している。
SCM変革の現場では特にそれが顕著だ。最新のAIロジックを実装しても、現場の調達担当者が「今までのやり方の方がいい」と言えばシステムは動かない。IT部門が整合性を盾に動かなければ、全体最適は実現しない。事業部門と経営が方向性を揃えなければ、変革は形だけになる。その「動かす」部分を一手に引き受けること——それがPSXの仕事の核心であり、AIが台頭しても失われない価値だ。
百田が6年間の大手流通チェーンプロジェクトで体感したのも、まさにその構造だった。最新のAIロジックを組み込んでも、現場に受け入れられなければ意味がない。全国展開を実現できたのは、技術の力だけでなく、各チームをつないで動かし続けた人間の力があってこそだった。
そしてもう一つ、百田が強調するのは「どこでやるか」という問いだ。大きな組織の中では、変革の実行は細分化され、自分の意思と成果の間に幾重もの壁がある。クオンティアではその壁が薄く、「やりたい」と思えば自分の手でやり切れる。
PSXが求めるのは、「コンサルタントとして課題を解きたい」という人よりも、「バリューチェーン領域でこうしたい」という自分なりの問いを持つ人だ、と百田は言う。そのうえでやり切る意志がある人間と一緒に働きたい。「挑戦する機会は用意できる。土台も整えている。あとは自分次第です」。
10年後のPSXを、百田はこう描く。「PSXから生まれた仕組みや事業が、世の中のスタンダードになっている状態」——。コンサルタントとして課題を解くのではなく、事業そのものをつくる側に立つ。それが百田のいう「コンサルというワードをなくす」の、本当の意味だ。
PSXが向き合うのは、製品の企画・開発から生産・調達・物流・販売に至るバリューチェーン全体の変革だ。それは業種や企業の規模を問わず、日本の産業が共通して直面している課題でもある。AIが普及し、テクノロジーの力がコモディティ化していく時代に、変革を「実行できる人間」の価値は、むしろ希少になる。百田はその確信を持って、PSXという組織をつくり続けている。