SIer経験は武器になる。 要件を実現する側から、課題を解決する側へ

金融機関向けシステム開発、ITコンサルティング、そしてクオンティア。市村翔平のキャリアは一貫してIT領域にある。しかし、その根底にあるテーマは技術そのものではない。「もっとお客様の課題解決に深く関わりたい。」その思いを追い続けた結果として、現在のキャリアがある。
大手SIerで金融機関向けシステム開発に従事した後、ITコンサルティング会社を経てクオンティアへ参画。現在はコンサルタントとしてプロジェクト推進やAI活用支援に携わる市村に、キャリアチェンジの背景と転職後のリアルについて聞いた。
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「本当はこうしたい」が実現できなかった。SIer時代に感じていた限界
市村は新卒で大手SIerへ入社し、金融機関向けシステムの更改案件やクラウド移行案件に携わってきた。要件定義から開発、テスト、運用保守まで一通り経験し、エンジニアとして着実にキャリアを積み上げていた。当時の仕事に不満があったわけではない。システム開発にはやりがいを感じており、評価にも大きな不安はなかったという。
それでも経験を重ねる中で、「もっとこうした方が良いのではないか」と考える場面が増えていった。印象に残っているのは、複雑なシステム構成を抱える金融機関の案件だった。
一つのシステムを更改するだけでも影響範囲は広く、障害リスクも高まる。本来であればシステム全体を俯瞰しながら、将来的な運用や保守まで見据えた構成に見直していくべきだと市村は考えていた。
「システム全体をもっとシンプルにできないかと思っていました。グランドデザインから描き直したい気持ちもありました」
しかし、それを実現することは容易ではなかった。金融機関のシステムは領域ごとに担当ベンダーが分かれていることも多く、自分たちだけで全体最適を実現できる立場にはなかったからだ。
お客様の課題は見えている。改善の方向性も見えている。それでも、自分の担当領域を越えて動くことはできない。
「本当にお客様のためになることが分かっていても、自分の立場では実現できないことがありました」
市村が感じていたのは、仕事への不満ではなく役割の限界だった。システムを作ること自体は面白い。しかし次第に、その先にある課題解決そのものに関わりたいという思いが強くなっていく。そうしてコンサルタントというキャリアを現実的に考え始めた。
技術力だけでは通用しなかった。コンサル転職後に学んだこと
ITコンサルティング会社へ転職した市村だったが、入社直後から順風満帆だったわけではない。
むしろ、大きな壁にぶつかったという。最も苦労したのは技術ではなく、仕事の進め方だった。
SIer時代、市村は成果物の完成度を高めてからレビューに出すことを徹底していた。品質を担保した状態でアウトプットすることが評価につながる環境であり、それが当たり前だった。しかしコンサルティングの現場では、そのやり方が必ずしも正解ではなかった。
「100点になるまで自分で抱えてしまう癖がありました」
コンサルタントに求められるのは、まず叩き台を出し、関係者を巻き込みながら議論を進めることだ。一方で当時の市村は、完成するまで自分で抱え込んでしまっていた。さらに、自ら主体的にタスクを取りにいく動きも十分にできていなかったという。
結果として先輩社員に負担をかけてしまい、厳しいフィードバックを受けることになった。
「最初の1〜2週間くらいだったと思います。マネージャーから『もっとバリューを出してほしい』と言われました」
前職で評価されていた仕事の進め方が、この環境ではプロジェクトのスピードを落とす要因になっていた。その事実は、市村にとって大きな衝撃だったという。しかし同時に、自分に足りないものを学ぶきっかけにもなった。上司や先輩社員との1on1を繰り返し、考え方や進め方を学ぶ。分からないことはそのままにせず、一つずつ確認する。
「ほぼ毎日のように相談していました。どうすれば価値を出せるのか、どういう考え方をすべきなのかを教えてもらっていました」
振り返れば、この時期の試行錯誤がコンサルタントとしての土台を作った。
それでもSIer経験は武器だった
一方で、市村はSIer時代の経験が大きな武器になったとも感じている。転職直後に苦労したのは、コンサル特有の仕事の進め方だった。しかし、だからといってそれまで積み上げてきた経験が無意味になったわけではない。むしろ、現場を知っていることは想像以上の強みだったという。
SIer時代、市村は要件定義から開発、テスト、運用保守まで幅広い工程を経験してきた。システムがどのように作られ、どこで課題が発生しやすいのか。現場がどのような制約の中で仕事をしているのか。その実感を持っていたことは、コンサルタントになってからも大いに役立った。
例えば、クライアントとのヒアリング。現場担当者から話を聞く際も、表面的な課題をそのまま受け取るのではなく、「なぜその運用になっているのか」「その背景にどんな制約があるのか」まで踏み込んで考えることができる。
「現場で何が起きているのかをイメージしながら会話できるのは、自分の強みだと思っています」
それはシステム開発を経験してきたからこそ得られた感覚だった。実際、市村がSIer時代に抱いていた問題意識も、現在の仕事につながっている。金融機関の複雑なシステム構成に向き合う中で、市村は「本来はもっと全体最適の視点で考えるべきではないか」と感じていた。個別システムの改修だけでは解決できない課題があることを、現場で見続けてきたのである。その経験があるからこそ、現在はシステムそのものではなく、お客様の業務や組織を含めた課題解決を考えられるようになった。
コンサルタントへの転職は、それまで積み上げてきた経験を捨てることではない。市村はそう実感している。むしろSIerで培った現場感覚や技術理解があるからこそ、お客様の課題をより深く理解できる。コンサルタントになった今も、その経験は自身の土台になっているという。
なぜITコンサルの次にクオンティアを選んだのか
ITコンサルティング会社への転職を通じて、市村は課題解決の進め方やコンサルタントとしての基礎を学んだ。しかし、経験を積む中で新たな思いも生まれていた。それは、より広い領域に挑戦したいという気持ちだった。
システム開発、インフラ、PM・PMO。これまでのキャリアを通じて様々な経験を積んできたが、その多くはIT領域が中心だった。もちろん、その経験は現在も大きな強みになっている。
一方で、この先のキャリアを考えたとき、特定の領域に閉じるのではなく、より幅広い経験を積みながら成長していきたいという思いも強くなっていった。
「自分の裁量でいろいろなことに挑戦したいという気持ちがありました」
そうしたタイミングで出会ったのがクオンティアだった。ベンチャー企業としての自由度の高さも魅力だった。すでに整った組織の中で役割を果たすだけではなく、自ら考え、提案し、新しいことに挑戦できる環境がある。その環境であれば、さらに経験の幅を広げることができるのではないか。そう考え、入社を決意した。
「任された仕事をやる」から「仕事を動かす」へ。クオンティアで変わったこと
実際に入社して感じたのは、任される範囲の違いだった。前職までは、クライアントへのデリバリーが仕事の中心だった。提案活動は営業やマネージャーが主体であり、自身が前面に立つ機会は多くなかった。
しかしクオンティアでは、提案からデリバリーまで一貫して関わることができる。
その変化を象徴するのが、AI活用推進プロジェクトでの経験だった。
クライアントへAI製品を導入し、開発現場での利活用を推進する。その中では、単にツールを導入するだけではなく、開発工程のどこでAIを活用すべきか、どのように現場へ定着させれば生産性向上につながるのかまで考えながら進める必要があった。
さらにクオンティアでは、提案やデリバリーだけではない。提案書作成や社内改善など、コンサルティングの枠を超えた仕事にも携わることができた。
以前は与えられた役割を遂行することに全力を注いでいた。しかし今は、何が必要なのかを考え、自ら動き、案件を前に進める立場になった。市村が転職を通じて求めていた「より上流から課題解決に関わる」という働き方に、少しずつ近づいている実感があるという。
挑戦を支えてくれたのは、相談できる環境だった
未経験からコンサルへ転職する人にとって、不安はつきものだ。市村も例外ではなかった。そんな中で支えになったのが、上司や先輩社員の存在だった。
特に印象に残っているのは、クライアント先の部長へ初めて説明をした案件だ。重要な説明の場だったが、上司は事前に部長がどのような観点を気にするのか、どんな質問が来そうかを丁寧にフォローしてくれたという。また日常的にも個別ミーティングの場が設けられ、困ったことがあれば相談できる環境が整っていた。
「失敗を恐れず挑戦できたのは、周りの支えがあったからだと思います」
放り出されるのではなく、挑戦を後押ししてもらえる。その環境があったからこそ、市村は未経験の領域にも踏み込むことができた。
SIerからコンサルを目指す人へ
現在でも、市村はコンサルタントという仕事に難しさを感じることがある。それは、自ら課題を見つけ出すことだ。システム開発のように完成形が決まっているわけではない。クライアント自身も認識していない課題を探し出し、その解決策を考えなければならない。状況に応じて動き方を変える柔軟さも求められる。
「課題を見つけるのは今でも難しいですね。でも、それがコンサルの面白さでもあると思っています」
最後に、市村はSIer出身者へこう語った。
「興味があるなら、ぜひ挑戦してほしいです」
SIerで培った経験は決して無駄にならない。現場を知っていること、システムを理解していること、お客様と向き合ってきたこと。そのすべてがコンサルタントとしての強みになる。
かつて、お客様の課題は見えていても担当領域の外側には踏み込めなかった市村は、いま自ら課題を見つけ、解決に向けて動く立場にいる。
SIerからコンサルへの転身は、それまでの経験を手放すことではない。現場で培ってきた知識や経験を、より広い課題解決に活かしていく。市村のキャリアは、そんな選択肢があることを示している。
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